こんにちは。
フェノメナエンターテインメント デザイン担当の山男です。
とある業務で児童向けコンテンツに関する検討を行う機会があり、初めて “学参フォント” なるものが存在することを知りました。
皆さんは知っているでしょうか?
そもそも “学参” という言葉に耳馴染みが無かったので検索してみると、「”学習参考書”の略」と出て来ます。
“学習参考書” というのも、分かるような分からないような感じだったので更に検索すると、Wikipedeiaでは「学習に用いられる図書のうち、教科用図書 (教科書など) の補足などに使われる。」とのことでした。私は「学習参考書=教科書」ではないかと予想していたのですが、どうやら明確に教科書と区別された言葉のようですね。
しかし、”学参フォント” で調べてみると、モリサワのフォント用語集ページ には次のように説明がありました。
常用漢字・かなについて、文部科学省の「学習指導要領」にある「代表的な字形」に準拠したフォントです。
上記のフォントを用いることに教科書と学習参考書で違いがあるとは考えづらいので、「学参フォント=教科用図書および学習参考書フォント」と捉えて問題無さそうです。
前置きが長くなってしまいましたが、”学参フォント”ってどんなフォントでしょうか?
文章でくどくど書くより、まずは具体例を見てもらう方が早いと思いますので、以下に並べてみます。
学参フォントはモリサワの『 学参 常改太ゴB101 』。
比較対象として、目にする機会が多そうな 『メイリオ』 『游ゴシック』 『MS ゴシック』 『NotoSans CJK JP』 『ヒラギノ角ゴ ProN』 を並べています。
まず ” さ “ ですが、学参フォントでは上と下が離れているのに対し、他のフォントでは『NotoSans』以外、すべて繋がっています。
” り “ も学参フォントでは左右が離れているのに対し、『メイリオ』『NotoSans』『ヒラギノ』は繋がっています。
” で “ は学参フォントだと濁点が右上に配置されているのに、他はすべて ” て ” の内側に抱え込まれています。
” 運 “ は学参フォント以外、「しんにょう」が簡略化されてしまっています。
ここで遥か昔を思い出してみてほしいのですが、皆さんは文字を練習した際、または書き取りテストをした際、” さ “ や ” り “ を繋げて書いたり、” で “ の濁点を内側に書いたりしたでしょうか。あるいは、” 運 “ のしんにょうを簡略化していたでしょうか。
学参フォントとは、文字を学ぶ段階の児童が「学習指導要領」にある「代表的な字形」を正しく認識出来るように配慮されたフォントなのです。
既に正しい字形を習得した後であれば、ある程度アレンジされたフォントでも各自で補完して扱うことが出来ます。しかし、文字を学ぶ段階にある児童が最初にアレンジされたフォントに触れてしまうと、アレンジされた状態を正しい字形として習得してしまう恐れがあります。
私はあまりに当たり前にアレンジされたフォントを見過ぎていて、それがアレンジされているのだということを完全に見過ごしていました。
ただし、アレンジされたフォントが悪であるというわけではありません。あくまで字形の習得過程においては不適当、なのです。
学参フォントは字形の正確性を重視した結果、複雑化・高密度化している文字が多々あります。特に漢字などは、小さい文字サイズで表示すると潰れて可読性が落ちるケースもあり、アレンジされたフォントはその辺りの解消に努めているようです。
” で “ の濁点なども、限られたスペースの中で他の文字とサイズ感を揃えたり、読み易さを向上させるために様々な試行錯誤を経た結果、現在のようなアレンジに辿り着いたのだと思います。
そういった視点でアレンジされたフォントを見ていくと、日頃当たり前に読んでいた1つ1つの文字が、また違ったものに見えてくるかもしれません。